そして消えゆく君の声
 ……やっぱり少し恥ずかしいかなと思いながら、箱のリボンに手紙をはさむ。

 さていつ渡そう。

 朝出会った時でもいいけれど、父に見つかって贈り物を取り上げられたりでもしたら目も当てられない。


(早く喜ぶ顔が見たいんだけどな)


 心のなかでつぶやくと、窓際に吊り下げた真鍮の風鈴が、澄んだ音で鳴った。

 明日がいい日になると教えてくれているような幸せな音。だから僕は笑って、贈り物を抱えたままベッドに寝そべった。


 誕生日を祝って
 ホタルを眺めて
 楽しい思い出を、両手で抱えきれないほど作ろう。


 今はまだ幼い僕らだけど、もう少しで世界に手が届くから。


 胸に抱いた幸せの重みを確かめながら、そっと口を開く。明日の練習をするように。待ちきれない思いを乗せて。


「誕生日おめでとう、秀二」


 きみが、幸せでありますように。


 中学生になっても。
 高校生になっても。
 大人になっても。


 ずっとずっと、笑っていてくれますように。
 
< 167 / 401 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop