そして消えゆく君の声
黒崎くんがくれた、大事な大事な指輪。
学校でのアクセサリーは禁止されているから細いチェーンに通してケースに取り付けたけど、花が揺れるたびにあの日のことが過去になっていくようで悲しかった。
「そんな顔しないでさ、王子様でも見て元気だしなよ」
相変わらず勘違いした雪乃が指さしたのはつき当たりの階段。
階上から下りてくるたくさんの足音に、なんだろうと視線を向けた瞬間「あ」と声が出た。
「征一さん……」
風が吹きこむように、空気が変わる。
「あの、もし良かったらこれ食べてください!」
「私も、上手にできたかわかんないんですけど……」
「一週間前から練習してたんですっ」
口々に話しかける女の子たちに優しく微笑み返す王子様。
今日も大勢のファンに囲まれた黒崎征一さんは、輝くようなオーラを振りまきながら廊下を歩いていた。
女の子の半分近くがエプロンや三角巾をつけているのを見るに、調理実習の帰りなのだろう。
九月ともなれば受験ムードでぴりぴりしている三年生も多いのに、征一さんの周りだけはお花畑に似たふわふわした空気がただよっていた。
学校でのアクセサリーは禁止されているから細いチェーンに通してケースに取り付けたけど、花が揺れるたびにあの日のことが過去になっていくようで悲しかった。
「そんな顔しないでさ、王子様でも見て元気だしなよ」
相変わらず勘違いした雪乃が指さしたのはつき当たりの階段。
階上から下りてくるたくさんの足音に、なんだろうと視線を向けた瞬間「あ」と声が出た。
「征一さん……」
風が吹きこむように、空気が変わる。
「あの、もし良かったらこれ食べてください!」
「私も、上手にできたかわかんないんですけど……」
「一週間前から練習してたんですっ」
口々に話しかける女の子たちに優しく微笑み返す王子様。
今日も大勢のファンに囲まれた黒崎征一さんは、輝くようなオーラを振りまきながら廊下を歩いていた。
女の子の半分近くがエプロンや三角巾をつけているのを見るに、調理実習の帰りなのだろう。
九月ともなれば受験ムードでぴりぴりしている三年生も多いのに、征一さんの周りだけはお花畑に似たふわふわした空気がただよっていた。