そして消えゆく君の声
 倉庫らしき部屋を抜けると、前にも会った店員さんが立っていた。夏のころより伸びた髪をくくりながら大きくため息をついて。


「要、オマエまーた裏口から入ってきたのかよ」

「まあ気にしないで、関係者みたいなもんだし」

「どこが……って、ああ日原さん。こんにちは」


 すこし小さめの黒目が急にこちらを見て、私は慌てて頭を下げた。


「す、すみませんっ、裏口からなんて……」

「いいよいいよ、どうせこいつに連れてこられたんでしょ」


 びし、と指さされた要さんが心外と言わんばかりに深いため息をつく。


「信じられない、この店では客を誘拐犯扱いするわけ?」

「さっき関係者って言ったのはどこのどいつだ。つーか仕事の邪魔」

「じゃあ奥行くから、何か適当に持ってきてよ」

「お客様の場合、迷惑料として三倍の金額を頂戴しますが」
 

 辛辣な言葉など聞こえていないとばかりに手をひらひらさせる要さん。前と同じ奥の座席に腰かけると、片手でシャツのボタンを外しながら空いた手を鞄に差し入れた。
 
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