そして消えゆく君の声
「……征一さんもお父さんと同じ考えなんでしょうか」

「どうかな、あいつの症状はもっとわかりにくいから。まあ、それなりに価値観は受け継いでると思うけど。秀二に対するあれも、正しくしてあげたいと思ってるからだろうし」


 人間は鍛造するもんじゃないんだけどね、と肩をすくめる姿からは、さっきまでの翳りは消えていた。

 代わりに宿る、遠い場所を眺めるようなどこかやりきれないような表情は以前、征一さんをどう思っているのか聞いた時と同じもので。


「これ、言おうか迷ってたんだけど」


 ちいさな声で呟いてから、要さんは私を見た。

 どこまでも整ったまっすぐな目に、思わずどぎまぎしてしまう。


「な、なんですか?」

「わかってると思うけど、こっから先の話は秘密厳守ね。誰かに言ったら蹴り一発じゃ済まないよ」

「はい!ぜ、絶対言いませんから教えてください」


 うなずいて答えた私の頭は黒崎くんと幸記くんのことでいっぱいで、他のことを考える余裕がなくて。

 これからの衝撃に対する心の準備が足りてなかったのかもしれない。 

 だから



「征一は中学の頃、自殺未遂を起こしている」



 その言葉を聞いた瞬間、本当に、心臓が止まるんじゃないかと思った。
 
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