そして消えゆく君の声
 ちっとも弱まらない雨が、ザアッと屋根を叩く。湿った空気は刺すように冷たいのに、身体が、心が、がどうしようもなく熱くて。

 全身を突き動かす激情。

 それでも、これ胸に引っかかった言葉を口に出すのには時間がかかった。


 息を吸って、吐いて。
 飛び出そうになる心臓を、片手で押えながら。



「好きだから」



 屋根の縁からこぼれた雫が空き缶を鳴らす。

 警鐘じみた、短い間隔で。



「好きだから、放っておくなんてできない」

 
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