そして消えゆく君の声
「六月くらいにはもう、好きだなあって自覚してた。友達とかにもけっこうからかわれたから、バレバレだったのかも」

「…………………」

「黒崎くんは、素敵な人だよ。優しくて強い。こんな風に誰かを好きになったのは、黒崎くんが初めて」 

「――ろ」

「好きだから少しでも力になりたい。私が口を出していいような話なのかわからないけど…………征一さんのことだって――」


 不意に、血の気のない唇が戦慄いた。



「やめろっ!」



 雨音を切り裂く勢いで響いた声。叫びに近い大声に、私は思わず口をつぐんだ。

 黒崎くんがこんな声を出したのは初めてだ。肩で息をしながら、歯を強く噛みしめている。苦しみを堪えるように。


「……何、考えてんだよ……お前、幸記の気持ちを……」

「幸記くん?」

「!」


 しまった、という風に逸らされる視線。けれど私はすぐに理解した。


「聞こえてたの?あのとき」
 
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