そして消えゆく君の声
「兄はあんな人生を送るはずじゃなかった。幸せを約束されていた。幸記だってそうだ。兄が昔のままだったら今ごろ普通に学校に通って、普通に友達を作っていた。だから幸記を助けるのは当然で、強さなんかじゃない。優しくもない。俺がしているのは、昔兄がしてくれたことの下手な焼き直しでしかないんだ」
せめて謝ることができたなら、現状は変わっていたのかもしれない。
けれど征一さんは自分の喪失を知らず、謝罪の言葉は抹殺された。
心を壊したなんて
心が壊れたなんて
言えるはずがないのだから。
心の血を吐き出して黙り込む黒崎くん。
何も言うべきではなかったのかもしれない。黙って聞き遂げるべきだったのかもしれない。
でも私は、ぽつりと問いかけてしまった。
降りしきる雨のなか、抑えた声は思ったよりはっきり響いた。
「どうして」
「……」
「どうして、教えてくれなかったの?」
せめて謝ることができたなら、現状は変わっていたのかもしれない。
けれど征一さんは自分の喪失を知らず、謝罪の言葉は抹殺された。
心を壊したなんて
心が壊れたなんて
言えるはずがないのだから。
心の血を吐き出して黙り込む黒崎くん。
何も言うべきではなかったのかもしれない。黙って聞き遂げるべきだったのかもしれない。
でも私は、ぽつりと問いかけてしまった。
降りしきる雨のなか、抑えた声は思ったよりはっきり響いた。
「どうして」
「……」
「どうして、教えてくれなかったの?」