そして消えゆく君の声

仮面

 雨は夜になっても降り続いていた。


 強い風が窓枠を揺らす音を聞きながら、私は何度も何度も寝返りをうった。

 頭まで布団をかぶっても、何匹羊を数えても、眠気は一向におとずれなかった。


 眠れない。
 眠れるはずがない。

 黒崎くんの言葉が、表情が、頭に焼き付いて。


(……事故だと、思う)


 征一さんの身に起こった出来事を、私はそう結論付けた。

 そう、いくつもの偶然がかさなって引き起こされた、不幸な事故。誰も悪くないし、誰も責められない。


 ……でも。


 そんな言葉に何の意味があるだろう。

 原因が何であれ、征一さんは取りかえしのつかない大事なものを失い、黒崎くんは罪の意識を背負い続けることになった。


 頭の中に、大切な人々の顔を思い浮かべる。


 もし自分の過ちで、誰かに消えない傷を負わせたら?

 もしお父さんやお母さんが、雪乃が、喜ぶことも悲しむこともできなくなってしまったら?


 ……そんなの、許せるわけがない。
 
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