そして消えゆく君の声
「幸記くん……」


 やわらかい皮膚、あたたかな体温。

 触れ合った箇所から幸記くんの優しさが染み入るようで、いつしか私は、こらえていたものを吐き出していた。


「幸記くん、ごめん」


 目の奥が、ツンと痛くなる。

 私には、こんな風に優しくしてもらう資格なんてない。だって。


「私、私ね、幸記くんの気持ちに応えられない。ごめん。こんなに優しくしてくれるのに、ごめんなさい」


 乾いた喉でしぼり出した言葉。

 ようやく、ようやく言えた。もっと早く言わなきゃいけなかった。

 後から後から頬を伝うしずくに視界がにじみ、空と葉の色が白っぽく混ざり合う。


 こんな時に泣くのはずるい。幸記くんのまっすぐな気持ちに向き合おうと決めていたはずなのに、いざとなった泣いて、困らせている。


 どうしてもっとしっかり出来ないんだろう。幸記くんに対しても、黒崎くんに対しても。

 これじゃ子供の時と一緒だ。何度も道に迷って、うろうろして、泣いて――。
 
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