そして消えゆく君の声
「じゃあ橋口くんは?」

「あれはただのお節介でしょ。橋口もわざわざ声なんてかけなきゃいいのに。変なとこでお人好しなんだから」


 言葉の棘を隠さない雪乃に、角居ちゃんがくすくす笑う。


「雪ちゃんは黒崎嫌いだもんね」

「じゃあ角居は嫌じゃないの?はっきり言って黒崎が来たところで雰囲気暗くなるだけじゃん。協調性ゼロだし」


 こっそり目を逸らす私に気付かず、眉間をぎゅっと寄せる雪乃。

 ……やっぱり、黒崎くんとのことを報告できる日は遠いかもしれない。


「まあ、扱いにくい人だとは思うよ」


 ぽてっとした唇に人差し指をあてて、角居ちゃんは後方のやり取りを見遣った。

 黒目がちな垂れ目で、何かを見通すように。


「でも私は、評価以前に黒崎のこと全然知らないんだと思う」

「見たまんまの評価でいいと思うけど。無愛想で感じ悪い」

「うん、それも正しい。知られたくないって思っているのも黒崎の一部だしね」


 雪乃は「じゃあいいじゃん」と眉間の皺をいっそう深くした。古びた教卓をぎいぎい鳴らして、不満をあらわにする。
 
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