そして消えゆく君の声
 半ば暴露大会と化したテーブルを抜け出して、私は外の風に当たりにいった。


 ふと時計を見たら、時刻は終了まであと少し。

 ついさっき扉をくぐったような気がするのに、楽しい時間は本当に足が速い。

 みんなも同じなのか、出口へ向かう道すがら、あちこちで話し足りないねという声が聞こえてきた。

 家に連絡して、この後カラオケに参加するから遅くなると伝える。

 とっておきのお酒でもあけたのか、通話先のお父さんはあまりろれつが回っていなかった。

 『心配だから駅まで迎えにいく』と言ってくれたものの今の状態じゃ駅で眠ってしまいそうで、私のほうが心配になる。


「……寒い」


 夜の風は冷たい。


 ここ数日でまた気温が下がったみだいで、クリスマスを飛びこえて年の瀬を意識してしまう。


 楽しい一日だった。

 年の終わりに、花が咲いたような夜。たくさん食べて、たくさん話して、たくさん笑って。

 来て良かった。
 心からそう思うのに、何かがたりなかった。


(わかっている)


 何が足りないか、誰が足りないか。

 こんなにも楽しいのに、あの人のことを考えると胸の底がぎゅうと痛くなる。
 
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