そして消えゆく君の声
 私は唇を噛んだ。じわじわ滲む悲しさが、眦を濡らしそうで。

 ずっとお兄さんの後をついて歩きながら、黒崎くんは心のどこかで、このままじゃいけないと感じていたのかもしれない。

 橋口くんや、周りの子の手を取って、外の世界へと歩き出したかったのかもしれない。お兄さんに頼らず、自分の力で。


 だけど黒崎くんが勇気を出す前に、事故が起きてしまった。


「高校で同じクラスになったら、信じられないくらい人間嫌いになってて驚いた。ずっとあんなだったって言う奴もいるけど全っ然ちがう」


 暗い通りを、赤い自転車が通りすぎていく。


「わが道いってるタイプだったら、気にしなかったと思う。でも黒崎は、他に好きなことがあるようにも見えないから、つい誘うんだ。本当はまた遊びに行きたいんじゃないかって。一人よがりなんだろうけど」

「そんなこと」

「でも日原、黒崎とけっこう話してるよな。安心した。誰かと話したいとか、まだ残ってるんだって」
 
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