そして消えゆく君の声
 かしゃ、とビニールが鳴る音。
 数日聞かなかっただけなのに、ひどく懐かしく感じるかすれ声に、肩の力が抜けた。

 会えた、と声にならない呟きがこぼれる。

 振り返った先には、コンビニの袋を手にした黒崎くんが立っていた。
 

「黒、崎くん……」

「…………」


 おずおずと声で名前を呼んだ私の横で、男の人は眉をぴくりとさせた。

 ばつの悪そうな顔をして、けれどすぐに嘲笑を浮かべる。

 冷たい視線の奥に、侮蔑の念がぎらついている。


「これはこれは、わざわざお手を煩わせてしまい恐縮です」

「俺の知り合いだから、俺が送るだけだ。いいから戻ってろ」

「意外でしたよ、あなたに家を訪ねてくるようなお友達がいるなんて。ですがもう少し、付き合う相手を考えたほうがいいのではありませんか? ただでさえあなたは……」


 吐き捨てるような物言いに眉間を寄せる私の手を、黒崎くんが強引に引っぱった。


「……聞こえないのか、今すぐ戻れ」


 温度を感じさせない声。

 けれど、私の腕をつかむ手には痛いほどの力がこめられていた。
 
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