そして消えゆく君の声
「……っ」


 深い意味なんてなかった。ただ、ちゃんと話がしたくて。


 相当勇気を振りしぼったけど、それでも自分の行動力に驚いてしまう。

 黒崎くんも同じだったのだろう。夜目にぼんやり浮き上がる黒い目は困惑に満ちていた。


「何……」

「橋口くん、ずっと黒崎くんのこと話してたよ。心配してた。来られないんだとしても、一言くらい言えば良かったんじゃないの」


 黒崎くんの顔色が変わる。


 どこか狼狽えたような表情から、見るからに不愉快そうな眼差しへと。


「日原には関係ないだろ」

「関係なくていい、お節介でいいから、聞いて」


 ぎゅっと掴んだ大きな手。

 骨のごつごつした指は、血が通っていないように冷たかった。そんなはずがないのに。
 
< 276 / 401 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop