そして消えゆく君の声

黒崎征一

 光を失った夕日が、夜へと沈みこんでいく。


 一番暗く見える時刻、廊下には明かりがついていなくて、現れたその人は影から溶け出でたようだった。


「くろさき…せんぱい」


 急激に凍りつく私の瞳をのぞきこんで、その人……黒崎征一さんは子供みたいに首をかしげた。


「少し長い話になるかもしれないけど、時間は大丈夫?」


 底のない真っ黒な目に射抜かれて、知らず足を引く。

 一度も話したことのない、けれど何度も頭の中に思い浮かべた人が目の前に立っている。

 じわじわ広がる闇に映える白い肌。蝋をぬったような唇。


 こんな人だっただろうか?


 瞳の奥が壊死したようなまなざしに、背筋が寒くなる。

 こんな生気のない人だっただろうか。それとも、黒崎くんの話を聞いているからそう思うのか。


「日原さん」

「あっ、いえっ、あの……大丈夫です……」
 
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