そして消えゆく君の声
 私たち他学年の生徒は建物に入ることは許されず、扉の前に並んで黙祷するよう先生に指示された。

 式の前も、最中も、辺りはずっとざわざわしていた。

 さざ波のような泣き声はずっと聞こえていて、座り込んで嗚咽する子を友達らしき数人がなぐさめている。


 長い髪の女の人が私の横をすり抜けて、『嘘だ』と、声にならない呟きを漏らしたのが、痛いほどくっきり見えた。


 足元がぐらぐらする。

 目の前の現実を、心の壁が拒絶する。


 到底受け入れられなかった。

 征一さんの未来が断ち切られたことも、幸記くんが決して許されない罪を犯してしまったことも、『彼』におとずれるはずだった細い光が、真っ黒に塗りつぶされてしまったことも。


 どうして、なんでと意味のない疑問符が黒い影のように頭に広がって強く首を振ると、同時に、ひときわ大きなざわめきが上がった。
 
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