そして消えゆく君の声
……征一さんの死後、長期の出張に出ていたお父さんに連絡した要さんは、征一さんが自ら命を絶ったのだと説明した、らしい。
知らされたのは事件の翌日。
ことの成り行きを語る要さんの声はひどく淡々としていて、それが逆に葬った「真実」の底知れなさを感じさせた。
本当は、要さんも打ちのめされているのかもしれない。私と同じように。内心の動揺を隠すことで、自分を保っているだけで。
「あいつはあいつで、やりとげたみたいな顔しちゃってさあ。俺がどんな気持ちで親父を誤魔化したか。生きた心地しなかったっての」
「大変でした、よね。……その、色々と」
「本当、善良な俺が巻き添えにならなくて良かったよ」
あの日、大勢の涙に包まれて、ひっそりと灰塵に帰した真実。
血まみれの包丁。えぐられた心臓。
赤く染まった床と、出血多量による死。
征一さんがこの世界からいなくなった本当の理由。
これは、隠してはいけないことだ。
そう誰かが訴える声が聞こえるたびに心臓がどくどくと脈打って、息苦しさに胸をかきむしった。
自分の身に起きるなんて想像すらしなかった、暗部に触れる恐怖。
でも、声を上げることはできなかった。
幸記くんがひどい目に遭うのが嫌で、私は横たわる征一さんに背を向けた。一度知った事実からは逃げられないのに。
――私はどうするべきだったんだろう。
ずっと影のように付きまとっている後悔。
どうすれば、何を伝えれば、この最悪の事態を防ぐことができたんだろう。
知らされたのは事件の翌日。
ことの成り行きを語る要さんの声はひどく淡々としていて、それが逆に葬った「真実」の底知れなさを感じさせた。
本当は、要さんも打ちのめされているのかもしれない。私と同じように。内心の動揺を隠すことで、自分を保っているだけで。
「あいつはあいつで、やりとげたみたいな顔しちゃってさあ。俺がどんな気持ちで親父を誤魔化したか。生きた心地しなかったっての」
「大変でした、よね。……その、色々と」
「本当、善良な俺が巻き添えにならなくて良かったよ」
あの日、大勢の涙に包まれて、ひっそりと灰塵に帰した真実。
血まみれの包丁。えぐられた心臓。
赤く染まった床と、出血多量による死。
征一さんがこの世界からいなくなった本当の理由。
これは、隠してはいけないことだ。
そう誰かが訴える声が聞こえるたびに心臓がどくどくと脈打って、息苦しさに胸をかきむしった。
自分の身に起きるなんて想像すらしなかった、暗部に触れる恐怖。
でも、声を上げることはできなかった。
幸記くんがひどい目に遭うのが嫌で、私は横たわる征一さんに背を向けた。一度知った事実からは逃げられないのに。
――私はどうするべきだったんだろう。
ずっと影のように付きまとっている後悔。
どうすれば、何を伝えれば、この最悪の事態を防ぐことができたんだろう。