そして消えゆく君の声
 あれと同じ。

 残酷な凶器を、命を奪いほど深く突き刺したんだ。そう思うと今まで心に抱いていた幸記くんが変貌したようで、だから本当は怖かったのかもしれない。 


 幸記くんがではなく、
 幸記くんが変わってしまったのかもしれないという事実が。


 けれど今、目に前にいるのは私が見てきたとおりの純粋でまっすぐな男の子だった。枯れて、衰えて、それでも凛と咲く花のように。


 だから私は彼を見た。正面から、目を逸らさずに。うまく言葉の出てこない私にとっては、それが精一杯だった。 

 瞳の中に答えを見つけたのか、幸記くんは目を伏せて困ったなと呟いた。 


「あれが最後だって思ったのに、会えたら会えたで欲が出るんだ。もっと会いたい、もっと話したいって」

「私も」 


 反射的に口が動く。


「私も、幸記くんと話したかったよ。幸記くんの話が聞きたくて、ここに、来たの」


 つっかえつっかえ伝えながら顔を寄せると、幸記くんの黒く澄んだ目の中に私が映った。


「そっか、ありがとう。……じゃあ、リクエストに答えないとね」


 幸記くんが、ほんの少し身体を起こした。
 
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