そして消えゆく君の声
白く漂白された場所に立っている。
鼻の先すら見通せなかった暗闇は、実際は果てしなく遠くまで広がる平原だった。唐突な視界の変化に面喰らいながら行くあてもなく足を進めると、柔らかな地面に足跡が残る。一歩、また一歩。ぎこちなく歩くたびに、消えない跡が伸びていく。
こんなにも容易かっただろうか。
あれほど重かった足が前身するのを、信じられない気持ちで眺める。もうどこにも行けないと思っていたのに。磁針を失くした船のように、海の底に沈んでいくのだと。
実際は、自分前には進むための足があった。道もあった。だから、どんな形であれ今日まで歩んできた。
そして、この道はまだ続いている。
『ずっと目の前にあったんだよ』
葉の鳴る音がする。
新緑をはらんだ瑞々しい初夏の空気が頬に触れる。
振り仰げば、先ほどまでは見えなかったはずの青空が広がっていた。薄い雲間で何かがきらりと光り、眩しさに目を細めると、足元に楕円型の翼の影があらわれた。
つやのある真っ赤な機体が、抜けるような空を横切っていく。あの日、腕の中で壊れてしまった飛行機。