そして消えゆく君の声
扉が開く音を聞いたのは、要さんに招かれておそるおそるお屋敷に足を踏み入れた私が、幸記くんの鉢植えを運んでいる時だった。
ネットで調べた知識と幸記くんのアドバイスを総動員させて日当たりを確認していたら家の奥から引き戸の音が聞こえて、家の人だろうかと咄嗟に身を隠すと、縁側に長い影が差すのが見えた。
ほんの少し摺り足気味の歩き方。
かすかな息遣いにひとつの予感が湧き上がって、鉢を抱えたままそっと視線を動かす。
「……」
知らず、鋭く息を吸った。
心臓が大きく鼓動を打って、全身に血が巡るのを感じる。
ここ数日間は顔も見ていないと聞いていた。いつ起きて、寝ているのかもわからないと。
死んでるのかもね、と縁起でもない冗談を要さんを諌めたとき、本当は怖くてたまらなかった。
だって、あんな姿を見たら。もう生きていたいと思う理由なんてないんじゃないかって。私が何か言ったところで、苦しめるだけなんじゃないかって。
だから、乱れた髪の隙間から見えた瞳が静かな光をたたえているのを見たとき、思わず名前を口走ってしまった。
「……黒崎、くん」
ネットで調べた知識と幸記くんのアドバイスを総動員させて日当たりを確認していたら家の奥から引き戸の音が聞こえて、家の人だろうかと咄嗟に身を隠すと、縁側に長い影が差すのが見えた。
ほんの少し摺り足気味の歩き方。
かすかな息遣いにひとつの予感が湧き上がって、鉢を抱えたままそっと視線を動かす。
「……」
知らず、鋭く息を吸った。
心臓が大きく鼓動を打って、全身に血が巡るのを感じる。
ここ数日間は顔も見ていないと聞いていた。いつ起きて、寝ているのかもわからないと。
死んでるのかもね、と縁起でもない冗談を要さんを諌めたとき、本当は怖くてたまらなかった。
だって、あんな姿を見たら。もう生きていたいと思う理由なんてないんじゃないかって。私が何か言ったところで、苦しめるだけなんじゃないかって。
だから、乱れた髪の隙間から見えた瞳が静かな光をたたえているのを見たとき、思わず名前を口走ってしまった。
「……黒崎、くん」