そして消えゆく君の声
 私のスマホのアルバムには、たくさんの画像が保存されている。

 おいしかった食べ物や、燃えるような夕焼け空、旅先の風景。それはもちろん作品と呼べるようなものではないけど、目の前の風景を切り取りたいと感じた私が根っこに存在している。


 きっと、そんな風に、何かを通して黒崎くんの心のかたちを知りたいのだと思う。ささやかな幸せをわかち合うように。


 口に出すとますます困惑させそうだから話題を友達の部活の話にしてごまかそうとしたけど、黒崎くんは庭先に植えられた小さな花を見ながら、ぽつりと言った。



「機会があればな」



 春によく似合う黄色の花は、幸記くんが大切に種を蒔いたものと同じだった。
 
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