そして消えゆく君の声
 肩越しの空は少しずつ夜に傾いて、橙と淡い紫が輝きながら混じり合った空に、細い雲がたなびいている。

 そのどこか名残惜しくなる空の色に、ふと目を細めた瞬間、微かに張りつめていた空気が砂のように流れていった。
 
 
 一歩、距離が詰められて。
 いつもそっけない言葉しか口にしない唇がゆっくり開いて。


 そして。



「好きだ」



 まっすぐ耳に届いて、鼓膜のすみずみまでを震わせた低くかすれた声。


 何の準備もなく告げられた言葉に心の覆いを吹き飛ばされて、ただ立ち尽くすしかない私に、黒崎くんはもう一度言った。

 すこしも目を逸らさずに。痛いほどの視線とは裏腹の、穏やかささえ感じる声で。



 ずっと好きだった、と。

 
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