そして消えゆく君の声
 ま、その辺はどうでもいいか。何にせよ妹は行方をくらませて、あんたがようやく消息を掴んだ頃には土の中。病弱な息子だけが残されていた。

 当然放ってはおけなかったが、あんたが幸記を連れてきたこの家には、あんたが自身が敷いた圧政と、それを厳格に守る息子がいた。



 征一が幸記を隠したのは、病気のせいじゃなかった。あいつからすれば、隠すしかないよな。「正しく」ない行動の結果をどう扱うのか、教えたのはあんただ。



 正直に言ってくれよ。本当はさ、征一が疎ましかったんだろ?
 あんたの秘密を嗅ぎつけて、大切な息子をあんな目に遭わせてさ。病死だなんてもみ消して、実際のところくたばってせいせいしてるんじゃないのか。


 ……なんで調べたかって。まさか、そんなわけないだろ。あんたのスキャンダルはそのまま俺に降りかかるんだから、ただの好奇心だよ。

 まあ、これでも人の子だからね。
 それなりに長い時間一緒に暮らした人間がああなってさ、俺も他のやつらも、なんでこんな馬鹿みたいな理不尽に巻き込まれたんだって思うでしょ。普通。


 そうだ、あんた幸記の病院に行ったんだって? わざわざ時間作るくらいなら、話のひとつでもすれば良かったのに。


 そもそも最初から、家だの息子だの全部無視して愛していたら、こんなことにはならなかった。なのにあんたには火の粉を払う度胸もなければ、謝ることもできなかった。

 失ったものの大きさ、思い通りにならない人生への怒りで頑なになって、正しさに固執して自分で自分の首を絞めた。



「弱かったんだな、あんた」



 みっともなくて可哀想だから、寂しい時は俺が父さんって呼んでやるよ。
 
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