そして消えゆく君の声
できるだけ大声で呼びかけながら背の高い草むらに入り込むと、やがて目に入ったのは小さな背中。
誰かが、地面に座りこんでいる。
シャツの張り付いた白い背中、膝を抱える折れそうなほど細い腕。女の人だろうか。
「あの」
草の匂いがした。
「どこか悪いんでしたら、人を……」
開いた傘をかたむけて、ちょっと緊張しながら細い肩にふれる。蒸し暑い空気とは真逆の、冷えた体温に眉を寄せた。
瞬間。
「だれ?」
うつむいていた黒い頭がゆっくりと持ち上がって、小さな顔の、大きな目が私を見つめた。
「俺を、連れ戻しに来たの?」
濡れた真っ黒な瞳。
透き通るような白い肌を伝う雨粒が、赤く色づいた唇から細くとがった顎へと消えていく。
ぬかるんだ地面にすわりこんで泣いていたのは、多分私より少し年下の、人形みたいに可愛い男の子だった。
誰かが、地面に座りこんでいる。
シャツの張り付いた白い背中、膝を抱える折れそうなほど細い腕。女の人だろうか。
「あの」
草の匂いがした。
「どこか悪いんでしたら、人を……」
開いた傘をかたむけて、ちょっと緊張しながら細い肩にふれる。蒸し暑い空気とは真逆の、冷えた体温に眉を寄せた。
瞬間。
「だれ?」
うつむいていた黒い頭がゆっくりと持ち上がって、小さな顔の、大きな目が私を見つめた。
「俺を、連れ戻しに来たの?」
濡れた真っ黒な瞳。
透き通るような白い肌を伝う雨粒が、赤く色づいた唇から細くとがった顎へと消えていく。
ぬかるんだ地面にすわりこんで泣いていたのは、多分私より少し年下の、人形みたいに可愛い男の子だった。