そして消えゆく君の声
「あの、ね」


 それまでのやり取りを打ち切って、私はごくりと唾を飲み込んだ。騒ぐ心臓を無理やり押さえつけて、かさかさに乾いた唇をひらく。


「話したいことって、言うのは」

「わかってる」

「……そ、そうだよね」


 淡々と返されて、胸がじわりと痛む。喉奥に、苦いものが込み上げた。


「頬の傷……どうしたの?」

「転んだ」

「……嘘」

「ああ、嘘」


 どうでも良さそうに眼下に連なる屋根を眺める黒い目。けれど。


「腕も、怪我してるよね」

「気付いてたのか」


 平静を装った声は、最後の最後で、ほんの少しこわばった。


「大したことない」

「……嘘」

「これは本当」

「…………嘘、だよ」
 
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