そして消えゆく君の声
 思いっきり文系脳の私と違って、黒崎くんは理数科目に強い。もっと早くにわかっていたら色々教えてもらって対策を練ったのに。


「補習にならなきゃいいだろ」

「今回の補習って長いよね、せっかくの夏休みなのに二週間も……あ」

「?」


 手を止めた黒崎くんが、訝しげな目で続きを促す。


「えっと……」


 それだけでフリーズしそうになる思考をどうにか解凍して、私は手の中の携帯をぎゅっとにぎりしめた。


「く、黒崎くんは、夏休み、なにか予定とかあるの?」


 自然に話そうとしたのに、逆にひっくりかえってしまった声。

 脳裏をちらついたのは、つい数十分前、帰り道で聞いた雪乃たちの言葉だった。


『好きな人いるならどっか誘ってみたら?』

『あ、やっぱり桂好きな子いるんだ』

『誰々、クラスの男子?』

『せっかくの夏休みなんだから頑張りなよ』
 
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