そして消えゆく君の声
「え、えええぇっ!?」


 思いっきり張りあげた声に、リビングから「桂、大きな声出すんじゃないの!」と注意の声が飛ぶ。

 あわてて口元をおさえたけど、全身に動揺を伝える鼓動までは抑えられなくて。


(なんで!?)

(どうして!?)

(どういう流れでそんな話に!?)


 立て続けに湧き上がっては頭の中をぐるぐる回る疑問符に、めまいがしそうだった。


「なにその反応、俺が相手じゃ不満ってわけ」

「ち、ちがっ、すみません、そうじゃなくて、なんで突然……」

「別に取って食おうってわけじゃないんだからデカい声でわめかないの。話をしたいだけだよ」


 たしなめるような軽い口調からは「要さん」が何を考えているのか、何をしようとしているのかまるで窺えない。

 ……そもそも、この人は本当に要さんなんだろうか。

 疑っても意味なんてないのはわかっているけど、学校での姿と雰囲気が違いすぎてつい訝しく感じてしまう。


 でも。


 次の瞬間ささやかれた言葉は、胸のなかの疑いや不安を一気にばらばらにしてしまうものだった。
 

「秀二のことでね、一度ゆっくりオハナシしたいと思って」

「……!」
 
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