私が本物の令嬢です!

1、名前を奪われた日


「フローラ、お前は今日からマギーだ。二度と自分の名前を口にするんじゃない」

 伯爵である父にそう告げられて、フローラは絶望した。
 ずっと想い続けていた公爵家の令息セオドアから求婚されて、ようやく結ばれると思っていたときだった。


 セオドアとは幼い頃に一度しか会っていないが、そのときお互いに結婚の約束をした。
 彼はその約束を守り、正式に伯爵家に求婚してきたのだった。

 セオドアとはもう10年会っていないが、3年前に彼の姿を見かけたことがある。
 とても顔立ちの整った好青年だった。
 そのときは話ができなかったことを残念に思ったが、こうして約束を果たそうとしてくれることに、フローラは感激し、やっと彼と会えると喜びをかみしめていた。

 
 だが、信じられないことが起こったのだ。


「公爵に嫁ぐのはお前じゃない」

 父の伯爵は冷たく言い放った。


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