私が本物の令嬢です!
3、10年ぶりの再会
フローラは裏庭でひとり泣いた。
ちょうど花が咲く季節で、庭は華やかだった。
風も気持ちよく、暖かい陽光はフローラの冷えた心を溶かしてくれる。
「あのときも、こんな暖かい日だったわ」
*
10年前。
公爵家の人々が訪れた日、フローラは狭い部屋に閉じ込められ、しばらくそこで大人しくしておくよう父に言われた。
しかし、水を与えてもらうことができず、喉が渇いたフローラはこっそり抜け出してキッチンへ向かった。
忙しく動きまわる使用人たちの目を盗んで、水を飲み、お菓子をこっそり持ち出して、裏庭に出ていった。
木の上に登り、がっしりした枝に腰をかけて、フローラはポケットに入れていたお菓子を食べた。
そのとき、眼下から声をかけられたのだ。
「君、どうやってこの木を登ったの?」
セオドアとの出会いだった。
フローラは慌てて降りようとしたが、セオドアも気に登りたいと言ったので、彼が登ってくるのを手伝った。
セオドアは木登りが苦手なようだったが、フローラが手を貸すとすんなり登ってきた。
そして、彼はフローラのとなりに腰を下ろしたのだった。
「いい眺めだね。ここで何してたの?」
「お菓子を食べていたの。あなたも食べる?」
「いいの? ありがとう」
セオドアの無邪気な笑顔にフローラの胸が高鳴った。