私が本物の令嬢です!

3、10年ぶりの再会


 フローラは裏庭でひとり泣いた。
 ちょうど花が咲く季節で、庭は華やかだった。
 風も気持ちよく、暖かい陽光はフローラの冷えた心を溶かしてくれる。


「あのときも、こんな暖かい日だったわ」





 10年前。
 公爵家の人々が訪れた日、フローラは狭い部屋に閉じ込められ、しばらくそこで大人しくしておくよう父に言われた。
 しかし、水を与えてもらうことができず、喉が渇いたフローラはこっそり抜け出してキッチンへ向かった。
 忙しく動きまわる使用人たちの目を盗んで、水を飲み、お菓子をこっそり持ち出して、裏庭に出ていった。

 木の上に登り、がっしりした枝に腰をかけて、フローラはポケットに入れていたお菓子を食べた。
 そのとき、眼下から声をかけられたのだ。


「君、どうやってこの木を登ったの?」

 セオドアとの出会いだった。


 フローラは慌てて降りようとしたが、セオドアも気に登りたいと言ったので、彼が登ってくるのを手伝った。
 セオドアは木登りが苦手なようだったが、フローラが手を貸すとすんなり登ってきた。

 そして、彼はフローラのとなりに腰を下ろしたのだった。


「いい眺めだね。ここで何してたの?」
「お菓子を食べていたの。あなたも食べる?」
「いいの? ありがとう」

 セオドアの無邪気な笑顔にフローラの胸が高鳴った。


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