私が本物の令嬢です!
――セオドア、早く――
誰だろう、この声は。
懐かしい女の子の声。
そうだ。この可愛らしい声は、フローラ。
――ふふっ、怖がりなの? 大丈夫よ。私が手を引っ張ってあげる――
手を伸ばすとその先に、白く小さな手があった。
セオドアがその手を握ると、しっかり握りしめられた。
――ほら、もう少しよ。頑張って――
あれは、そうだ。
木登りをしていたのだ。
確か、木の上でお菓子を食べていたフローラを見て、可愛らしくて天使のように見えたのだった。
女の子がどうやって木登りをしたのか不思議だった。
「危ないよ」と声をかけた。
しかし、フローラは笑顔で「平気よ。慣れているから」と答えた。
セオドアは木登りが苦手だった。
しかし、フローラのとなりに座りたいと思った。
――そうよ、そこに足をかけて。滑らないでね――
フローラに手を引っ張られ、登りきると目の前に彼女がいた。
美しい金髪に、麗しい碧眼。
ひとめで恋に落ちた。