私が本物の令嬢です!
「その使用人に魅了の術がかけられていたのかもしれないぞ」
「魅了? なんだそれは?」
「魅了をまとった人間は、目的の相手を惚れさせてしまう」
「……つまり、その使用人の娘は魅了の術にかかっていたと?」
「その可能性はある」
「え? それならもしかして、10年前のフローラも魅了にかかっていたのだとしたら……」
「最悪、それもあり得る」
「つまり、俺は術に嵌っていただけでフローラを愛していたわけではないのか?」
「あくまで、最悪な事例だ。そうと決まったわけじゃない」
「ああっ……すべて俺の勘違いなのか?」
「落ち着けって。とりあえず、俺がナスカ令嬢と使用人について調べてやる。俺なら魅了に取りつかれた人間がすぐにわかるからな」
セオドアは肩を落とし、ため息をついた。
「だが、それが真実であっても、俺は責任を取らなければならない」
「大袈裟だな。婚約破棄なんか今どき珍しくもないぞ」
「公爵家の名に傷がつく」
「お前、ほんと真面目なんだな。ていうか、貴族ってめんどくさ」
セオドアはそれ以上何も言わなかった。