私が本物の令嬢です!
フローラはセオドアに連れられて、魔法師の屋敷を訪れた。
あまり手入れのされていない庭は雑草が鬱蒼と生い茂り、古びた洋館は陰鬱な雰囲気が漂っている。
「あの、ここは?」
フローラが訊ねると、セオドアは笑顔で答えた。
「俺の従弟の家なんだ。ひとまず嵐が過ぎるまでここで避難させてもらおう。怪我の手当てもしなければならない」
古い木製の扉が音を立てて開く。
すると中から黒ずくめの男が出てきた。
フローラは見覚えがあった。
「あ、あなたは……」
「あんた、あのときのお嬢さんじゃないか」
驚いたのはセオドアも同じだ。
「君たちは知り合いだったのか?」
「知りません」
フローラはすぐさま否定した。
いくらセオドアの知り合いだとしても、フローラの中ではこの男は不審者だ。
「グレン、彼女が怯えているじゃないか。一体何をしたんだ?」
「いや、何もしてねぇよ」
セオドアはフローラに優しく微笑む。
「大丈夫だよ。こいつは少々顔が怖くて口が悪いけど、悪い奴じゃないんだ」
「お前、言いたい放題だな」
「本当のことだろう」
「ちっ……」
彼らのやりとりを見ていたフローラは少しばかり緊張が解けた。