私が本物の令嬢です!

「で、あんた名前は何ていうんだ?」

 グレンに訊かれて、フローラは戸惑った。
 本当の名を口にすることはできない。
 だから、ひと呼吸置いて今の立場上の名前を言った。


「マギーです」
「単刀直入に言うが、あんたに奇妙な術がかけられている。誰に何をされたのか、言えるか?」

 フローラはどきりとして、あのとき起こった出来事を思い出した。
 それを言おうと顔に出したが、口を開くと途端に酷い眩暈がして、そのまま床に崩れ落ちた。


「マギー、大丈夫か?」
 とセオドアがフローラの肩を抱いて支えた。

「すみ、ません……」

 言えない。
 言いたいことを訴えようとしても、身体が拒絶してしまう。
 そのことさえも、口にできない。
 もどかしい思いをしながら、悔しさに涙がこぼれた。


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