私が本物の令嬢です!

「グレン、お前は一体何を……?」

 セオドアが怪訝な表情で訊ねたが、グレンはフローラに顔を向けたまま続けた。


「なあ、あんたは使用人のマギーだろ?」
「いいえ!」


 その瞬間、三人のあいだに静寂が訪れた。
 フローラは自分の口を手で覆う。
 セオドアは驚いた顔で眉をひそめる。
 そして、グレンは笑みを浮かべた。


「何となく、そうかと予想していた。あんた、真実を自分から口にすることを禁じられているんだろう。だから、それを逆手に取った質問をしてみた」
「ど、どういうことなんだ? グレン、これは一体……」

 驚き慌てるセオドアをよそに、グレンはフローラをじっと見据え、笑顔で訊ねた。


「これが最後の問いだ。あんたはフローラ・ナスカじゃない」
「いいえ」

 そう答えた直後、フローラはぼろぼろと涙を流した。


 やっと、誰かに打ち明けられたことで、フローラは心底安堵した。



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