私が本物の令嬢です!
「あのときの言葉……もしかして、覚えて?」
「もちろん。君の好きな本に書いてある言葉だ。覚えているよ。俺に教えてくれただろう?」
「ええ、そうね。私たち、木登りをして、お菓子を食べながら本について語ったわ」
「そうなんだよ。俺たちは花を摘んで遊んでいたわけではない」
それを聞いたフローラはクスッと笑った。
フローラになりきったマギーがとっさについた誤魔化しだが、そんなもの、セオドアとフローラからすれば滑稽なセリフだった。
「ああ、どうしてこんなことに」
セオドアはフローラをそっと抱きしめて、髪を撫でる。
フローラはその心地よさに触れ、セオドアの胸で泣いた。
「俺は、必ず君を助けると誓う。だが、時間が必要だ。君が本物だと訴えたところで、奴らは揉み消してしまうだろう。きちんとした証拠を提示して関わった者全員に罰を受けてもらわなければ、君は安心して暮らせない。もう少しだけ待ってもらえるか?」
フローラは顔を上げて、セオドアを見つめながら頷き、微笑んだ。