私が本物の令嬢です!
「おいおい、ふたりとも暗くなるなよ。何も世界が終わるわけじゃねぇだろ」
「だが、俺と偽物令嬢のことが社交界に広まってしまっては終わりだ」
確かに社交界では一度広まった噂を覆すのは至難の業である。
たとえそれが、間違っていた事柄であったとしても。
「だから、それを利用するんだよ」
「え? グレン、何を言って……」
セオドアとフローラが驚いてグレンに目を向けると、彼はにんまりと笑った。
「どうせなら派手にやってやろうぜ。奴らが揉み消すことができないくらい大っぴらに、社交界で大恥をかかせてやるんだ」
「そうか、なるほど。そうすれば、ナスカ伯爵も言い逃れはできないな。しかし、確たる証拠をつかむにはいささか時間が足りないのではないか?」
「そうでもない。呪術師については見当がついている。そいつをおびき出せばいい。あとはナスカ伯爵と周囲の関係、そしてナスカ令嬢の実母の真実について、調べる必要がありそうだ」
その言葉を聞いたフローラは思わず声を荒らげた。
「お母さま? 私のお母さまに何かあったのですか?」