私が本物の令嬢です!
9、私は逃げも隠れもしない
そのときが来るまで、フローラはグレンの屋敷でひっそりと隠れているはずだった。だが、フローラは一晩考えたあげく、ナスカ家に戻ることにした。
「お、遅いじゃないの! マギー、あなたがいないせいで私たちがどんなに苦労したか!」
怒りのあまり声を張り上げる先輩に対し、フローラはもう怯えたりしなかった。
それどころか、堂々と彼女に言い放つ。
「先輩、それは私がいないと仕事がまわらないということですね? そうですよね。掃除からテーブルセッティングと雑用まで、すべて私に押しつけていましたものね。手順がおわかりにならないのでしょう?」
それを聞いた先輩使用人は顔を真っ赤にして叫ぶ。
「こ、この私に偉そうな口を……」
「先輩、落ち着いてください。お客さまの前で」
まわりが慌てて制止すると、先輩使用人はセオドアに目を向けるとハッとして黙った。
「わ、私たちは急ぎ準備をいたしましょう。マギー、あなたはこの部屋を片付けておくのよ」
「承知いたしました」
とフローラは冷静に頭を下げた。