私が本物の令嬢です!
意識を消失しそうになると、呪術師が使用人に命令し、フローラは頭から水をかけられた。
「さあ、終わりましたよ。これで、この子は自分の名前も身分も口にすることができない」
「それはいつまで持続する? しばらくは名乗られると困るのだが」
伯爵の問いに呪術師が答える。
「呪いを解かない限り、一生名乗れないでしょう」
それを聞いた伯爵はにやりと不気味な笑みを浮かべた。
マギーはフローラの髪をつかんで、煽り立てる。
「ほら、自分の名前を言ってみなさいよ。ほら、早く言いなさい」
「うっ……ふ……」
名前を口にしようとすると声が出なくなる。
それを見たマギーは目を見開いて嘲笑する。
「あはははは、惨めだわね。今日から私がフローラよ。公爵さまと結婚するのはこの私。あははははは!」
フローラはマギーを睨みつけながら涙を流した。