私が本物の令嬢です!
「きゃああっ! 何をするの? 誰か、助けてえっ!」
水路に落ちたのはフローラではなくマギー、つまり今の令嬢である偽フローラのほうだった。
先輩使用人は驚愕し、その場を動けなくなった。
だが、助けを呼びに行くと自分が突き落としたことがバレてしまう。
先輩使用人は何とか誰にも悟られないように隠れようとした。
しかし、フローラはそうなることがわかっていて、彼女のあとを尾行していた。
「まあ、先輩! なんということですか?」
とフローラはわざと大声で叫んだ。
すると、前もって知らせておいた侍従や使用人たちが集まってきた。
「は、早くお嬢さまをお助けしろ!」
「そこの使用人を捕らえろ! お嬢さまを殺そうとした奴だ!」
先輩使用人は捕らえられたが、必死に抵抗した。
「違うわ! 人違いなの。まさか、お嬢さまだとは思わなかったのよ!」
「誰を突き落とすつもりだったんだ? 間違いだとしても許されることではないぞ」
徹底的に責められる先輩を、フローラは他の者たちに紛れて見つめた。