私が本物の令嬢です!
「さあ、フローラ。泣くのはもうおやめなさい。せっかくの美しい顔が台無しになるわ。あなたは花嫁なのよ」
夫人に頭を撫でられながら、マギーはぐしゅっとハンカチで鼻をかんだ。
「おかあ、さまぁ……わたし、が……伯爵令嬢、なのよね?」
「当たり前でしょう。お父さまはきっと頭に血がのぼってしまったのよ。気にしなくていいわ」
「そうよ……私が、令嬢よ……あの女が平民よ」
マギーは悔しさに心が耐えられなかった。
自室に戻る際、廊下で拭き掃除をしているフローラの姿を見た。
蹴り飛ばしたくなる衝動にかられ、彼女の背後まで迫る。
そして、近くにあったバケツに足をかけて、転がした。
がらんっとバケツが音を立てて倒れ、汚れた水が廊下に流れてフローラの足下を濡らしていく。
「まあっ! なんて無礼なの! 主人の目の前を汚すなんて。躾が必要ね」
マギーが手を振り上げると、すぐさまフローラにその腕をつかまれた。
フローラはマギーの腕をつかんだまま、じっと睨みつけてくる。