私が本物の令嬢です!
11、今日はお前たちが社会的に死ぬ日だ【グレン視点】
会場の扉が開いて、グレンが登場すると、人々は戸惑いの声を上げた。
「え? どういうこと? 同じ人間がふたり?」
「双子か?」
そんな人々の声など気にも留めず、グレンは偽物に近づき、じっと見下ろした。
「よくもまあ、俺の格好をして出てこれたものだなあ。バッカニア男爵とやら。いや、闇の呪術師ゲートと言ったほうがいいか? でも、そんな中途半端な変装では他の人間は騙せても、俺の伯父さんは騙せなかったようだね」
グレンの言葉に男はガクガク震えながら床を見つめている。
グレンが目星をつけた闇の呪術師について、セオドアが徹底的に調べた。
すると、バッカニア男爵という人物が浮かび上がったのだ。
男爵は魔法師を目指し、師匠に師事していたゲートという男。
その師匠があまりにも厳しく、自分にいつも冷たく接するのに、弟子が手柄を立てるとすべて自分のものとして自慢していた。
ゲートは師匠を憎み、ついに殺害してしまう。
だが、師匠の跡を継いだゲートはあまりにも未熟で、行く先々から出来損ないと揶揄される。
ゲートは怒り狂い、正当な魔法師で生きていくことをやめ、闇の呪術師となる。
呪いであれば、魔法より簡単に物事を動かせる。
こうして、ゲートは呪いの術により、闇の世界で成功したのだった。
そして今日、破滅しようとしている。
グレンとセオドアの策略によって。