私が本物の令嬢です!
「グレン、これは一体どういうことなんだ?」
険しい顔つきで訊ねる伯父に向かって、グレンは笑って返す。
「見てのとおり、俺と偽ってこの会場に侵入した呪術師ですよ。わざわざ招待状まで偽装してね」
グレンが本物の招待状を見せながら、偽物をちらりと見下ろした。
もちろん、これはグレンが仕組んだことだ。
グレンはナスカ伯爵の姿をしてゲートに接触し、パーティの日に魔法師グレンの姿になって出席しろと命令し、偽物の招待状を渡したのだ。
違法煙草の密売とナスカ令嬢入れ替わりの件で脅せば簡単に言うことを聞いた。
しかし、変装は完璧ではなかったようだ。
正式な魔法師であるグレンと、中途半端な呪術師であるゲートには、魔力の差があり過ぎた。
何せ、グレンがナスカ伯爵に変装していることを、仮にも魔力を持つゲートが見抜くことができなかったのだから。