私が本物の令嬢です!

「きゃあっ」とフローラが声を上げると同時に、周囲の人々が「わああっ!」と歓声を上げた。
 そして、セオドアはフローラを抱きかかえたまま、両親と親族に向かって高らかに言い放った。


「私の妻となるフローラ・ナスカはここにいます。10年前に結婚の約束をしたフローラは、ここにいる彼女だ」


 周囲は歓声と戸惑いの声が混じる。

「一体どういうことなんだ?」
「彼女が本物のナスカ令嬢だと?」
「じゃあ、あれは何者だ?」

 人々の視線が真っ赤なドレスを着たマギーに集中する。
 マギーは怒りの形相で声を荒らげた。

「ち、違うわ! フローラは私よ! 私がナスカ家の伯爵令嬢で、公爵さまの妻になるの! 公爵夫人になるのよおおっ!!!」


 マギーの声に同情する者は誰ひとりおらず。
 逆に、冷たい視線ばかりが集中した。



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