私が本物の令嬢です!

 一方、パーティ会場ではセオドアが伯爵に向かって、周囲にわかるように書状を掲げて見せていた。

「ナスカ伯爵、あなたの罪は禁忌呪術の行使と違法煙草(ヘドニラ)の密売。そして、前伯爵夫人殺害の容疑です」

 これを聞いた伯爵は、顔から汗を噴き出した。
 となりにいる夫人は驚愕のあまり目を見開いて伯爵を見る。


「あ、あなた……前の奥さまは病気だって」
「病気だ! 何を根拠にそのような嘘を! リリアは私が看取ったのだぞ!」

 セオドアは伯爵を無視して続ける。


「ナスカ伯爵、あなたの殺人容疑は前伯爵夫人だけではないんですよ。もうひとり、殺害した人物がいるでしょう?」

 伯爵は顔面蒼白になり、目を見開いたまま絶句する。
 周囲がざわめく中、セオドアは淡々と続ける。


「あなたは、前伯爵夫人の元恋人であるアルレア侯爵家の長子も殺害した」

 周囲がどよめいた。


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