私が本物の令嬢です!

14、ふたりの令嬢のその後


 ナスカ伯爵家の噂は瞬く間に社交界に広がった。
 伯爵が今までしたきた罪と、実の娘に殺害された事件。
 噂は時折、別の件も盛り込まれて、人々はお茶会の菓子(ネタ)として大いに盛り上がった。

 伯爵が殺したのは前妻と元恋人、だけではなく、通り魔殺人の犯人ではないかとか。
 伯爵は数十人も愛人がいて、よそに多くの子をもうけているとか。
 伯爵が性犯罪者であるとか、実の娘にまで手を出したとか。


「一番怖いのはそこらにいる人間だよなあ」
 とグレンがぼやいた。

 セオドアとグレンが、フローラの見舞いに来ている。


 フローラはあれから5日間高熱で寝込んだ。
 呪術師ゲートが死んだことで、フローラの呪いは解けたが、身体が元通りになるまでにはまだ時間がかかるという。
 グレンが毎日、治癒魔法でフローラの治療を行ってくれる。

 セオドアは後始末に追われているようだ。
 公爵家の親族たちにもきちんと説明をして、フローラのことも両親に認めてもらえるよう努力してくれたらしい。


「君が早く元気になってくれることを、俺の両親も願っているよ」
 とセオドアが言った。


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