私が本物の令嬢です!
「お母さま……」
母を思って涙をこぼすフローラをセオドアがそっと抱きしめる。
あのようなパーティの場で伯爵に濡れぎぬを着せられた母のことを考えると、悲しくて悔しくてたまらない。
たとえそれが嘘だったとわかっても、一部で母の悪い噂を流すものはいるだろう。
社交界とはそういうところだ。
誰にどんなことを言われようとも、セオドアが理解してくれるなら、それでいい。
フローラは亡き母のためにも、精いっぱい強く生きることを決意した。
こうしてナスカ伯爵家は主を失い、今後のことはフローラに託された。
だが、まだ気がかりなことがたくさんある。
伯爵夫人は意気消沈して何もできず、フローラが世話をしなければならなかった。
そして、父を殺害した実の娘マギーの行方がわからない。
ナスカ家には公爵が手配した護衛騎士が数人いる。
しかし、マギーの影はひそかに、フローラへと迫っていた。