私が本物の令嬢です!
「マギー……マギー! 私の可愛い娘はどこ?」
伯爵夫人は精神を病んでたびたびベッドの上で唸った。
医師が言うには、身体はどこも悪くないのに動けないらしい。
フローラは夫人の世話をしながら伯爵家の業務を行った。
正確には、伯爵家を手放すための処理である。
フローラはもうすぐ公爵家に嫁ぐ身。
伯爵夫人は気が狂ってしまい、とてもこの家を管理できる状態ではなかった。
そうなれば、他の家門に領地を渡すしかない。
伯爵の遺産を使って夫人は療養施設に入ってもらうことにした。
しかし、夫人はそれを嫌がった。
「マギー、私を置いていくの? 嫌よ。母を置いていかないで!」
夫人は泣きながらフローラにすがりついた。
「お継母さま、私はマギーではありません。フローラです。あなたは心の病にかかっています。自然の豊かなところでゆったりと療養することが一番だと思いますわ」
「フローラ……そうよ、フローラだわ。私の娘……どうか私を置いていかないで」
フローラは呆れぎみにため息をついた。
突き放すことができない自分にも、呆れてしまった。