私が本物の令嬢です!

「さあ、食事の時間よ。料理を運ぶのを手伝ってちょうだい。ほら、あなたもよ」

 先輩使用人から突然、フローラは声をかけられた。
 使用人たちも、フローラがこの家の令嬢だと知っている。
 だが、フローラが娼婦の子であると伯爵に聞かされており、全員見下すような態度だった。


「いいの? あの子、お嬢さまたちの様子を見たらショックを受けるわよ」
「それも見物よ。失敗して旦那さまのお怒りを受ければいいんだわ」

 使用人たちの悪口を耳にしながら、フローラは料理を運ぶ。
 広いダイニングルームの長テーブルに、公爵家と伯爵家の一同が向かい合って座っている。
 

 フローラはついセオドアに目をやってしまう。
 見れば見るほど、本当に、男らしく清潔感のある姿である。

 そして、にこやかなマギーの姿も目に入る。
 本来、あの場所にはフローラがいるはずだったのだ。


< 9 / 97 >

この作品をシェア

pagetop