私が本物の令嬢です!
「跡継ぎのことなど考えなくてもいい。それに、継ぐのは必ず男である必要はないだろう」
「けれど、私はあの子たちに跡継ぎのことで醜い争いをさせたくないのです」
フローラは俯いた。
どうしても、自分とマギーのことを思い出してしまう。
血のつながった姉妹なのに、相手を殺すかどうかというところまで憎しみ合った。
フローラは娘たちを平等に、ときに厳しくも優しく育てたつもりだ。
おかげで姉妹はたまに喧嘩をしても普段は仲良くしている。
娘たちに権力争いなど、絶対にさせたくなかった。
「ではこうしよう。娘たちが大人になり、自分たちで未来を決めてから、公爵家のその後のことを考えるとしよう」
「それでは遅いですわ。次期当主は幼少期から教育をしなければならないでしょう」
「娘たちが大人になるまで10年もかからない。俺はまだまだ現役だ。それから跡継ぎを育てても遅くはないだろう」
「旦那さま……申しわけございません。私がこんな身体だから……」