私が本物の令嬢です!

「フローラ、少しでも長く生きてほしい。少しでも多く、君と子供たちとの時間を過ごしたいんだ。だから、跡継ぎの話はそのあとでもいいと思っている」

 セオドアはフローラをぎゅっと強く抱きしめた。
 フローラは黙って涙を流した。


 10年前、フローラにかけられた呪いは、術者が死亡したことで完全に解けたはずだった。
 しかし、その後遺症としてフローラの身体はひどく弱ってしまった。
 定期的に魔法師グレンに治癒魔法を施してもらってはいるが、死期を延ばすことまではできないらしい。

 フローラの寿命はあと10年ほどだと言われている。それより早くなることもあれば、それ以上生きることもあるだろう。
 フローラは今、治癒魔法で延命を施しているが、それがいつまで続くかは誰にもわからない。
 セオドアは残された時間を家族だけで大切に過ごしたいと思っていた。


「わかりました。旦那さまの望むとおりに」
 とフローラは言った。

 ふたりが微笑んで見つめ合っていると、急に扉が開いて双子の娘たちが飛び込んできた。



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